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高森明勅
2019.7.17 06:00政治

団塊ジュニアの“ジュニア”は…

7月13日、明治聖徳記念学会主催、 國學院大學研究開発推進センター共催の
公開シンポジウム「戦後の神社神道」が開催された。
その中で、宗教学者で國學院大學教授の石井研士氏が神社の将来について、
かなりリアルでシビアな予測を述べられた。
一般に、未来予測はしばしば当てにならない。
しかし、例外的に人口動態については、かなり正確な予測が可能。
だから、それを元に早めに手を打つ事も出来る…はずった。
ところが、わが国の場合、早くから予測されていた少子化に対し、
有効な手立てを講じる事が出来ていない。

石井氏は、厚生労働省の「人口動態統計」による
「合計特殊出生率・出生数の変化」(昭和22年~平成29年)を
グラフ化して参加者に示された。
それを見ると、昭和22~24年の出生率・出生数が極めて高いのが一目瞭然。
いわゆる第1次ベビーブームだ。
よく知られているように、この間に生まれた人々は、
その数の多さから「団塊の世代」と呼ばれる。
それから24・5年経った昭和46~49年。再び出生数が(前回ほどではないが)
多くなる。第2次ベビーブームだ。

これは団塊世代が結婚して子供を生んだ結果。
この時に生まれた人々を「団塊ジュニア」と呼ぶ。
但し、出生率は横ばい又は低下した。
その為に、第1次ほどの出生数にはなっていない。
第1次での最高出生数が2,696,638人(昭和24年)だったのに対し、
第2次の場合は2,091,983人(昭和48年)が最高だった
(ちなみに直近の平成30年の出生数は918,397人)。
その後も出生率は下がり続け、団塊ジュニアが結婚して
子供を生む頃になっても、出生数は同じように減少している。

これは、団塊ジュニア世代が適齢期を迎える平成初頭~10年代迄に、
効果的な少子化対策を打てなかったことを意味する。
日本は少子化を緩和する最大のチャンスを既に逃してしまった。
石井氏は、第2次ベビーブームに続く第3次ベビーブームが無かったのが
「現在の少子化の大きな原因」という言い方をされた。

更に、都市圏を除いて、少子化だけでなく、
人口流出による住民の減少傾向も続く。
その結果、地域共同体に支えられて来た全国の神社はどうなるか。
同氏が日本創世会議のレポート(平成25年「消滅する市町村896」)
を元に、消滅の可能性がある自治体に位置する神社数を算定された結果は、
驚くべき内容になっている(但し、平成25年のレポートを元にしているので、
原発事故があった福島県はデータに含まれていない)。

全国神社の約4割(41%)は令和32年迄に消滅する可能性がある
自治体に位置しているのだ(神社数にして31,184社)。
取り分け秋田県の場合、県内の神社の99.9%が
消滅可能性自治体に位置している。

その他、神社の50%以上が消滅可能性自治体に
位置する地域を列挙すれば、以下の通り。

北海道、岩手県、宮城県、山形県、石川県、
山梨県、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、
徳島県、愛媛県、高知県、長崎県、大分県。

かなり深刻な見通しだ。

 

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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